誕生日前日「正直はた迷惑」



「だーかーらー!知盛の欲しいもの!!すっごい悩んでいるんだから。」



深刻な顔で望美が話しかけて来たのは今日の朝。いつものように学校に行く途中だった。基本的に将臣も望美も朝が弱い。よっていつもは二人とも遅刻ぎりぎりに学校に行っていた。ところが今日に限って朝早いうちから将臣の部屋にズケズケと上がりこんできた。早く起きろ!!と大騒ぎをし、無理やり起こされ、家の中で急げ急げとせかされ、やたら早い時間に家を出た。 つまりは将臣にこの質問をしたいが故の行動だったわけである。



「っていうか、その質問一週間前にもしてきたよな?」

一週間前同じことを聞かれたのを思い出す。確かそのときに「知るわけない」と答えてはずだ。つまりそれじゃ納得しなかったわけだ。…ま、納得するはずもないか。

「大体、何で今更そんな質問するんだよ?」



  望美がうっと押し黙る。そしてぼそっとつぶやいた。

「…誕生日なんだもん。」



あまりに意外な答えに将臣は唖然とする。…誕生日?大体にしてそんな細かいことを知盛が覚えているのか。大体あちらの世界に居たときはほとんどの人が漠然としか誕生日を覚えていなかったのを思い出す。理由は簡単。正月になると皆年を取る…そういう決まりだったからである。

「その日にちは…一体どうやって知ったんだよ?」

知盛がそんな細かいことを覚えているはずない。きっと望美がからかわれたに違いない。

「保険証と免許証見たから間違えないよ。」

女というのは時々怖いものだ…と内心将臣はあきれた。



「で…誕生日って正確にはいつなんだ?」

「…明日。」

「明日?!」

「まだ決まんないから困っているんじゃない。ねえ、知盛の欲しいもの本当に聞いてない? 何でもいいんだけど。」

「いや、マジで知らねえよ。大体あいつ物欲ってあまりねえしな。」

「え〜それじゃ困るよ!!」



望美がぷんぷん怒っている。

本当は全く知らないわけではない。

おそらく、酒でも贈ればいいのだけれど知盛が安い酒で満足するはずない。知盛の家には仕事先からもらっただの、自分で買っただの言うやたら高い酒が大量にあった。更に望美はまだ未成年。酒など買ってはいけない。うかつにそのことを教えればきっと望美は何とかするだろうから余計なことは言わない。



もう一つ知っている。それは…望美自身。



こんなに女に夢中になり、それこそ浮気一つせず、それどころか将臣自身にまで嫉妬のオーラを向けてくる、そんな知盛をはじめてみた。いつも望美は「知盛ばかり余裕でずるい」と口にするが、余裕がないのは知盛のほうだと思っている。



そう、知盛が本当に欲しいものは望美だけなのだ。



が、それは癪なので決して望美には伝えない。しかしそうは言っても望美はこの調子でずっとうるさい。こうなったら、少しヒントを出して静かにさせるか。

「じゃあ、望美が知盛から欲しいものはないのかよ?」

「え?私??」

「そ。意外と同じようなものを欲しがるかもだぜ?」



ふと、望美は考え込むような顔をする。その顔は…将臣の知らなかった、オンナ、の顔だ。寂しい気持ちと腹立たしい気持ちがふと沸き起こる。この感情に名前をつけることなく、目をつぶって、忘れることとしよう。



(月曜日、覚悟しておけ)

何をあげたか、問いただしてやる。





*あとがき*

誕生日当日に書き上げたお話。本当はもっと前に考えておけ!って感じですが。

これはお誕生日企画に提出した話のサイドストーリーになっています。

お誕生日企画のお話は掲載期間後にUPします。

しかし…前日は将臣、当日の望美と来たら後日談知盛もいるのか??