ある日の夕方


家に帰ると彼女はソファーに寄りかかって寝ていた。

台所からは、おいしそうな食事の匂いがしていた。

部屋の明かりをつけて彼女を見つめる。

さらさらと長い髪。磁器のような白い肌。赤い唇。

何度肌を重ねたとしても、満ち足りないこの思い。

髪を指に絡めとりそっと口づけをする。



「う…ん…?」

彼女がゆっくりと目を開けた。

「う……あ、ごめん…!ご飯…。」

あわてて飛び起きようとする彼女をそっと制止させる。

彼女はちょっと驚き、でも素直に動きを止めた。

さっきまでは感じなかった強い瞳が自分を捉えている。



今まで、女にこれほど執着することはなかった。

少しやさしくすれば、うまく誘いに乗ってくる。

一度手にしてしまえば、その女にどんなに泣かれようとも、

簡単に手放すことが出来た。

興味がなくなったといったほうが正しいだろう。

そして、次の女を手に入れていた。



そっと彼女に口づけた。

彼女がためらいがちに手を回してくる。

さらに体を密着させ、そのままキスを繰り返す。

次第に口づけを深くして、

ほしいままに彼女を手に入れてゆく。

でも、すべてを手にすることは出来ない気がするのはなぜだろう。


体を離すと彼女が少し苦しそうに、目に涙をためてこちらを見ていた。

その上目遣いが自分の中の何かを熱くする。

「いきなりどうしたのよ。」

小さい声で彼女がちょっとした不平を漏らす。

そしてソファーから立ち上がり、

「ご飯食べようよ?」



そう言って台所に歩き出そうとする彼女を後ろから抱きとめ、

耳元で思い切りやさしく、艶っぽくこう答える。

「その前にお前が欲しい。」