朝焼けの色
白いシーツの上に紫色の髪が散らばる。
それは朝焼けの色。
外から入る風が冷たくて目を覚ました。
9月ももう下旬で、ちょっと前に比べると随分涼しいと感じることが出来る。
そして、つい先ほどまで熱かった自分の体はもう随分冷えている。
時刻は午前5時。目覚めるのには少し早い時間だ。
もう少し惰眠を貪りたいがこの風は冷たすぎる。
窓を閉めるため寝台の上からおりた。
外は薄暗い。音もない。時折聞こえるバイクの音が耳障りだ。
朝の匂いは決して好きではない。腹立しいほどにすがすがしいこの匂い。
無味無臭なはずなのにでも色がある。そんな匂いが…恐ろしく嫌いだ。
一年程前には考えられなかった今の生活。
まさか自分がこんな地面より高いところに家を持ち、聴き慣れない機械音の中、やたらと多い人ごみをすり抜けられねば歩けない道を歩く羽目になろうとは、思いもよらなかった。
一年前の自分だったら確実に逃げ出していたであろう。
「う…ん…。知盛…。」
小さな声でまるで甘えるかのような声がする。
そちらのほうを見るとやたら美しい肌をした少女が顔に柔らかな笑みを浮かべ寝ている。
彼女の方に近寄り、そっと頬に手を伸ばす。
すると無意識なのかそれとも起きているのか、その手に甘えるようにして落ち着いた表情を見せる。
「お誕生日おめでとう」
そういう彼女からの言葉と、柔らかいとても口づけとは言えないような口づけから始まった昨日の夜は、理性も何もかもがはじけ飛んで、どうしようもなかった。
一つ年を取る。そんなことに興味など微塵もなかったはずなのに、その言葉一つでその声だけで特別なものに思えるから、不思議なものだ。
一年ほど前だったら、そんな感情は生まれもしなかっただろう。
まさか、自分の手に落ちついた彼女を見てまさか手に嫉妬するなど、白い肌を見ただけで安心するなど、馬鹿げた感情だってなかった。
朝の匂いだって好きじゃなかったのに、無味無臭なこの空気が彼女の匂いを際立たせてくれるから、とてつもなくいとおしく感じる。
これからの人生、彼女の横でずっと年を取り続けるのだろう。
もし、彼女がいなくなったらきっと年を取ることはなくなるのだろう。
ふと、カーテンの外の朝焼けを見ると、それは美しい紫色。
でも、それより美しい紫色の髪を持つこの女のその体を抱いてまた眠りについた。
*あとがき*
どうしようもなかった知盛殿については会えてスルーで。誰か書いてくれるのなら大歓迎なのですが…。
しかしやたら甘甘だなあ