この空の色も、
この桜の色も、
彼女とみるから、こんなに美しいのだろう。
すべてが終わってから、何年かの年月が経って、
それでもこの命が永らえていることに純粋な驚きを感じる。
小さな一軒家に暮らす日々が、まだ夢だったのではないかと、
そう錯覚するほどに。
でもこれが夢でないことの証拠があって。
それはいつだって彼女の存在だけであったはずなのに。
まさか、京の鬼姫が「労咳に効く薬を作った。」と突然訪れて、
まさか本当にその薬が効くなんて、思いもせずに。
「総司さん、いい加減起きてください。」
「えーまだ眠いんだけどなー。」
「何言ってるんですか。今日はお約束の日ですよ?ね?」
そしてさらに、子供が出来てこんな生活が待っているなんて。
「父様。お花見行くんだろ?」
「はいはい。君も頑固だね。誰に似たのかな?」
「しぶとさは、総司さんに似たのよね?」
「頑固さは千鶴にそっくりだ。」
「早くしないと、桜、散っちゃうよ―――。」
「はいはい。」
新選組に居たころの自分が見たらどう思うんだろう。
剣を振っていないことに、近藤さんを守り切れなかったことに、
いらだちを覚えるのかもしれない。
でも、今は、
子供を育て、千鶴を守ることに、
これ以上ない喜びを感じている自分が、嫌いではない。
この空の色も、この桜の色も、
彼女と、子供とみるから、こんなに美しいのだろう。