85 いいわけがましい彼
いつもの学校帰り、いつものマック、いつもの二人。
でも今日はいつもと違う。
「本当に悪かったって!望美。この通り!!」
将臣君が必死に頭を下げている。でも、私は許してなんかあげない。将臣君なんて見ないで外を見る。
「本当にごめん!!」
知らない。将臣君なんて知らない。
「ほら、俺も時差ぼけって奴で…戻ってきていきなりだったからつい…」
「他にもしなきゃなんねえ事いっぱいあって。」
「何かこっちの言葉がもう遠くなっていて…。」
そんな言い分けなんて聞きたくないってば。
ことの始まりは昨日の夜。ほんの些細な約束から始まった。
「将臣君…映画の招待券当たったの。横浜でなんだけど、一緒に行かない?」
将臣君がこっちに戻ってきて一ヶ月もまだたってない時のこと。こんな風に将臣君を誘い出した。こっちに戻ってきてから何となく慌しくて、そういった遊びを全くしていなかったから、丁度いいかな…?と思って誘い出した。その質問のあと将臣君はあっさりOKを出した。
「恋愛物だけど本当にいいの?」
「いーって。久々だしな。」
そういって満面の笑みで答えてくれたはずなのに。
約束は12時に鎌倉駅で。
お隣なんだけど、私がちょっと買い物がしたくて早く出たかったからばらばらの待ち合わせだった。なのに待てど暮らせど将臣君は来なくて。何度メールしても、電話しなくても通じなくて。そして連絡が入ったのは午後3時。映画なんてとっくに終わっている時間だった。
来なかった理由は簡単。寝坊したからだと言う。本当に信じられない!!
「本当に悪かったって。」
「かわりに何でも好きなものおごってやるから。」
「機嫌直せって…。」
ごちゃごちゃ…もう本当にうるさい!
言い訳もご機嫌取りも絶対にいらないし、そんなものに絆されない!
すでに暗くなった夜道を二人で歩く。心なしか吹いている風が冷たい。さすがに将臣君も言い訳するのをやめて私についてくる。
「じゃ、な。今日は本当にわるかった。」
家の前で、そういって将臣君がポンと優しく私の頭に手を乗せる。
その途端私の目から涙がぽろぽろとあふれてきた。
「ホントはね…映画なんかじゃなくてもよかったの。ただ、二人でどこかに行きたかったの…。」
何にも聞かれてないのに、その手の暖かさに安心して、本音がどんどん出てくる。
「将臣君がこっちに戻ってくるまでずっと寂しくて、やっとで戻ってきてくれて嬉しかったの。あとね、戻ってきても、なんか忙しくて…二人きりでどこかに行くことなんてなかったから、ただの幼馴染に戻っちゃったような気がして…何だか不安になってきて…。」
堰を切ったかのようにどんどん言葉があふれ出す。
「それに、将臣君電話しても、メールしても出ないんだもん…もしかしたら戻ってきたのは夢なんじゃないか…私が勝手に望んだ夢なんじゃないか…って…。」
最後は言葉にならなかった。将臣君の腕の中に包まれて声が出ない。
「本当にごめんな…。」
そういってしばらく泣きじゃくる私を抱きしめてくれていた。
夢なんかじゃない…と思い知らされるまで、ずっと。
*あとがき*
どこかで同じネタがあったらゴメンナサイ!(ないことを祈ります)
望美ちゃんだってまだ高校生〜ってことを書きたかったお話です。