47 酒豪が堕ちた夜
「飲みすぎると体壊すよ?」
知盛を横目で見、望美があきれたように言う。
なぜなら「この“はっぽう”は好きじゃない」とか言いながら500ミリのビール缶が5本、「甘いのは酒じゃない」とか言いながら梅酒が1パック、「渋いな…」といいながら赤ワイン1瓶、そして「これが酒だ…」とか言いながら日本酒をちびちび飲んでいる。それなのに全然酔ったそぶりを見せず、普通と全く変わりない。ここまで来るともうすでに怒る気にもなれず、ただあきれるだけだ。
「知盛って…もしかしなくても…ザル?」
「ざる…?」
「飲んでも酔わない人のこと。」
「クッ…。」
何故そこで笑うのか。望美にとってその笑いは癇に障った。
というか、知盛はいつも人をバカにしたように感じる。それはそれでかなり腹が立つものだ。いつか、この男の鼻をあかしてやりたい。メラメラと望美の心に火がついた。こうなったら意地でも酔わせてやりたい。
「知盛〜お酌してあげようか〜?」
ちょっぴり甘い声で誘う。こうなったら意地でも大量に飲ませて酔わせるしかない。
「ほう…珍しいこともあるものだな…。」
望美の企みを知ってか知らずか、知盛は上機嫌になる。あっさりと日本酒の入った徳利を望美に渡した。
「じゃあ、はい、どうぞ…って!!」
ぐい、と腕を引っ張られ何故か知盛の腕の中に納まる。胡坐をかいている知盛のひざの上に乗る形となり望美は慌てた。
「ちょ…重いから…おりるよ!」
ばたばたと体を動かしているが知盛はその場所から動かせようとしない。それどころか酒を注げとばかりにお猪口を望美の前に出してくる。しょうがない。今回の目的は別のところにあるのだ。ここで知盛の機嫌を損ねるわけにはいかない。とくとくと酒を注ぐ。
知盛は上機嫌に、右手でお猪口を持ち、左手で望美の腰を持つ。望美ははずかしいのかもよくわからない状態だった。
「…おい。お前も飲むか…?」
唐突に知盛が聞いてくる。望美は慌てた。
「い…いらないよ!み、未成年だし!!」
大体酒に弱い望美が飲んだらそれこそ酔っ払ってしまう。それではこの計画は無駄になってしまう。それだけはどうしても避けなければ!
「クッ…遠慮するな…。」
そういって無理やり望美の口に酒を飲ませる。もちろん口移しで。
図らずもそれはそれは濃いお酒を望美は飲む羽目になってしまった。途端に望美の目の焦点があわなくなる。
意識がぼんやりしてくる。
「さあ…何を企んでいたか教えてもらおうか…?」
望美が何かを企んでいたかなど、知盛にはお見通しだったのだ。が、酒によって望美は知盛の質問になど答えられない。
「う〜ん…知盛…大好き…。」
ぼんやりと呂律の回らない声で知盛に甘えるようにそんなことを言う。顔を赤くして、上目遣いで、しかも少し涙目だった。そんな状態で知盛が平常でいられる訳がない。
「知盛〜何か…あつい…。」
突然そう言い出して望美は事もあろうに服を脱ぎだした。さすがにこの展開には知盛も唖然とする。
(こいつは…酒に酔うと脱ぎだす癖があるのか…?)
望美は服を脱ぎ、それこそ下着も着けず生まれたままの姿になる。そしてそのまま、また知盛に甘えだした。
「知盛〜大好き〜」
きゅううと知盛に抱きつく。首筋に望美の息がかかり、鼻には酒の匂いよりも望美の匂いのほうが際立って来る。
髪の毛がさらさらと望美の体に纏い、望美の手が知盛の髪に触れだす。耳元でずっと、それこそ甘い声で「大好き」と何度もささやく。
…限界だ。
理性などあったものではない。望美を抱き上げるとそのまま寝室に連れ込んだ。
翌朝、そのことを望美が覚えているはずなどなかった。
*あとがき*
酒豪もおちますよ、これじゃ!
