餌をやろう
「ほら…これが欲しいのだろう?」
悔しい!
いつだってそうだ!
この男はこうやって自分の欲しいものを目の前にぶら下げて、ニヤニヤと笑っている。
くやしい、くやしい、くやしい!!
どうやったってこの男に敵わない。
いつだって私の欲しいものなんて簡単に見抜く。
そうやって餌をぶら下げていればいつか私が食いつくとでも思っているのかしら?
…きっと、思っているんだろう。
本当にくやしい!
「もう、知盛なんて知らない!!」
がつんと足に思い切り蹴りを入れて、大股で走り、知盛の部屋を出る。
わざと大きな音を立てて扉を閉めマンションの階段を駆け下りる。
アッカンベーをすることを忘れずに。
「チッ…これで何度目だ??」
何にもせずに望美が出て行ったのは。
いつも大きい餌を持ってくるのは望美のくせに。
あの甘い香りに、強い瞳に、可愛らしい声に踊らされているのは自分のほうだ。
一度くらい…あいつから餌を頂いてもいいじゃないか。