トリック・ア・トリート



10月中旬。

知盛の家に大量のかぼちゃを買ってきて、望美が台所に立つ。

ハロウィンに向けて、譲君に教えてもらったかぼちゃ料理を山ほど作る。

机の上には、パンプキンスープ・かぼちゃのバイ、かぼちゃサラダ…ありとあらゆるかぼちゃ料理だらけ。

リビングから、不機嫌な声が聞こえる。

「神子殿は…俺を黄色くしたいのか…?」

知盛がぼんやりと言う。さすがにこの机の上のかぼちゃ料理の量を見れば誰だってそう思うであろう。

「えー?違うよ?もう少しでハロウィンだから。譲君にかぼちゃ料理教えてもらったから、練習してみたの。」

「はろうぃん?」

「あ…そっか。知盛は知らないよね。」

料理をするその手を止め、知盛のほうを見る。

望美は料理が上手ではない。それなのに必死になって大量にかぼちゃ料理を作っていたためか、白いエプロンが見事に黄色い。

包丁を片手に奮闘する様は鬼気迫るものがあった。まるで戦場に立っているかのような、そして黄色い返り血を大量に浴びたかのようだ。

その惨状があまりもすごいため、知盛は人知れずため息をつく。今晩のおかずは期待できない。



望美が知盛のいるソファに近寄り、べたんと座る。

納得いかない知盛は目で“隣に来い”と訴える。望美はしぶしぶ知盛のそばに腰掛けた。

「えっとね…ハロウィンっていうのは…って、ちょっと!」

知盛が、望美のエプロンを脱がし始めたので思わず声を荒げる。

そんなことにはお構いなしにエプロンを脱がすと、望美をひざの上に乗せ腰を抱き寄せる。

「で?はろうぃんとは?」

人の話を聞いているのか、それともからかっているだけなのか。しょうがないのでそのままにして話を続けた。



「ハロウィンってのはね…えっと…。」

そういえばどんなお祭りなのだろう。聞かれると答えられない。

「えっとね…お化けの仮装とかするんだよね。あとはかぼちゃでランプを作ったり…」

「何故そんなことをする?」

「何故って…。」

わからない。正直わからない。お手上げである。



「…ごめん。よくわからないよ。…あ、そういえば」

“トリック・ア・トリート”と子どもが言うとお菓子をもらえるといった習慣を思い出し、が、とっさにそれを口にするのをやめた。

「お菓子をくれなきゃいたずらしちゃうぞ」などという台詞を知盛に教えたらどうなるか。

いたずらされるに違いない。

「ハロウィンっていうのは、かぼちゃのお祭りだよ!!」

そう結論付けて知盛に納得させるしかなかった。



(トリック・ア・トリートは絶対に教えない!!)

望美はそう決意したのだった。







…後日



「とりっく・あ・とりーと…」



低い声で何かとんでもない声が聞こえてきた。

ぎょ、っとして振り返る。

「知盛…いきなり何??」

返事は、ない。

っていうか、その台詞はわざと教えていないのに!

「神子殿は…はろうぃんではこの言葉を使う…というのを知っていて教えなかったな…。」

にやり、望美の顔を覗き込む。

「え…な…何のことかな…?」

「隠しても無駄だ…。神子殿。とりっく・あ・とりーと。お菓子をくれぬならいたずらするぞ?だったか…。で、どうなんだ?」

お菓子なんて…あるはずない。

もう、やけくそである。





ちゅ。



頬に羽のようなキス。

「あ…甘い、お菓子のようなキスあげたんだから!!こ…これでいいでしょ?!」

顔を真っ赤にして望美が叫ぶ。

しかし…。

「それじゃ、足りない。…いたずらさせてもらおうか。」



結局、大きなお化けにいたずらされまくるのであった。







*あとがき*

またまたイチャコラ話。

この二人はイベントのたびにイチャイチャするに違いない。