一編



(俺は見逃さなかったぞ。)

ちらり横にいる年上の彼女を見遣る。

そう、自分は見逃さなかった。

喫茶店を出るとき、入れ違いで入った男に目を奪われた悠里を。



…確かにその男は、男の自分から見ても信じられないくらいの色気を持っていた。

あの男からしたらいくら美形ぞろいといわれたB6(自分で言っていて恥ずかしいな。)だってまるでお子ちゃまだろうし。

教師の中にも、あんな危険な色気を持った男はいない。



こんなときばかり気になってしまう。

悠里からしたら自分なんて本当に頼りなくて、

本当は、大人の男に甘えたいときがあるんじゃないか…って。

でも、いま、彼女の横にいるのは自分だから、

他の男になんて目を奪われて欲しくない。



…こんなことを思うほうがガキなんだろーか?



「ねえ…一君。」

「何?」

「さっきの子さ…」

さっきの子?…ああ、春日さんか。

「…かわいかった、ね。」

…なんだ?この切れ切れの言葉は。何で言いにくそうに言うんだ…?

…え…まさか…。



「悠里、もしかして、ヤキモチ?」

「そ、そんなこと…ない、よ?…ないと思う…事もない…」

おーい、悠里。日本語、翼以上におかしくなってんぜ?

「一君、何笑ってるの?」

「いや、うれしーなと思って。」

そう言って悠里のおでこにキスを一つ。

そうするとまた真っ赤になって。



悠里も自分も同じ気持ちだということに、安心して、

なんだか無性に幸せな気持ちになった。