重衡→望美



はらり、はらり舞う。

桜の花びらが舞う。

降り立った月からの姫君は今どこに居るのだろう。



出会いは突然。

華やかな宴から抜け出し一人酒をゆっくり飲もうと思っていたときのこと。

そこに現れた月からの姫君。

でも、彼女は残酷にも自分とそっくりな兄の名前を呼んだ。

それでも、

清らかな彼女に恋をした。



出会いは一瞬。

何事もなかったかのように消えてしまった。

後には桜の花びらが残っているだけ。

十六夜の月があたりを照らしてみても、そこに彼女の姿は、ない。



例え兄を想っていた姫君だとしても、必ず自分のほうに振り向かせる自信はあった。

兄の手は血で汚れているが、自分の手はまだ汚れていない…。

あの、清らかな姫君に差し伸べる手は、自分が持っている。



はらり、はらり舞う。

火の粉が舞っている。

もう、月からの姫君に差し伸べる手は持っていない。





でも、十六夜の月を見れば思い出す。

穢れているのに、それでも彼女に恋をしている。