初雪の日
風が冷たい。いつの間にか季節は夏から冬に変わっていった。
彼女はピンクのロングコートをはおっていた。
「あ……雪。」
ゆっくりと降り出した粉雪がはらはらと舞い落ちる。
彼女の顔は寒さのせいか赤く染まっていた。
手を口にあて、少しでも暖をとろうとしているのがわかった。
自分のマフラーをばさりと彼女の頭に落とす。
彼女は少し驚いた顔をしてこちらを見る。
黒いカシミアのマフラーは確かに男物で少し彼女には不似合いな気がした。
「……悪いよ。」
そう言って返そうとする彼女の首に、きちんとマフラーを巻いてやる。
彼女はさらに驚いた顔をして、それでもゆっくり微笑んだ。
「……ありがとう。」
少し彼女の顔が赤いのは、きっと寒さのせいだけではないと思う。
どんどん彼女に溺れてゆく。
どんどん目が離せなくなってゆく。
彼女の一挙一動が自分の心を振るわせる。
日日綺麗になっていくこの女を、どうにかして自分のそばにだけ居させたい。
そんな独占欲がどんどん自分の中で大きくなってゆく。
そんな自分を悟られないように、
余裕なふりをして、
大人なふりをして、
唇の端だけで笑う。
「このお礼は……後でじっくりとな。」
彼女がさらに顔を赤くして何かを言おうとしていた。
言わせる前に、彼女の手をとり、自分のポケットに手を入れて、
横断歩道を歩き出した。
